ハロウィンとカボチャの種類の豆知識
季節が急に進み、本格的な秋を感じる時期になってきました。今回は、ハロウィンが近いということで、カボチャ担当としてイベントに乗じたコラムをやらせてもらおうと思います。
ハロウィンとはそもそも、ケルト人の宗教的な行事が発祥とされています。ケルト人にとって10月31日は、秋の収穫祭で1年の終わりの日、また先祖の霊がやってくるかつ悪霊もやってくるといった日だったようです。日本で言うと秋の収穫祭、大晦日、お盆、ついでに節分も?を同時に行うようなものなのでしょうか。
ともかく、そのハロウィンで悪霊を追い払うために野菜のカブをくりぬいて火を炊いたり、仮面を作っていたそうで、この行事がアメリカに伝わった際にアメリカで身近だったカボチャを代用し、これがその後世界中に広まり、いまのカボチャを使ったジャックオーランタンになったということです。
私も昨年初めてジャックオーランタンを作ってみたのですが、普段育種をしているセイヨウカボチャとは違う種(しゅ)であるペポカボチャ(Cucurbita pepo)を用いました(写真1)。切りやすく、種(たね)も掻き出しやすくて予想より簡単に作れたと記憶しています。
図1.庭に飾られたカボチャたち
このペポカボチャは、この時期スーパーなどに飾られているかわいらしい柄の小さいおもちゃカボチャから、秋に各地で開催されるどでカボチャ大会に用いられる飼料用の品種までバラエティに富んだ種です(写真2)。
図2.園研の人が家庭菜園でつくった「どでカボチャ」
日本では食用にされていないかといえばそうでもなく、ズッキーニや能登伝統野菜にもなっている金糸瓜(そうめんカボチャ)、グラノーラなどに入っているカボチャの種(たね)なども多くはペポカボチャのものかと思います。
また、日本で見られるカボチャの種(しゅ)は上述のペポカボチャ以外にも、普段から身近なセイヨウカボチャ(C. maxima)、戦後しばらくまでは主流だったニホンカボチャ(C. moschata)、キュウリの台木に用いられる黒だねカボチャ(C. ficifolia)、またそれらのかけ合わせの雑種カボチャがあります。
セイヨウカボチャは明治初期に日本に導入されていますが、全国各地で盛んに作られるようになったのは ‘えびす’(1964年)が登場した1960年代ごろの事です。園研でも当時新規性のあった近成り性のある‘近成芳香’(1963年)や、極早生で食味に優れる‘みやこ’(1970年)を育成し、それ以降セイヨウカボチャの育種に専念しています(写真3)。
次にニホンカボチャですが、日本へは1549年にポルトガルから導入された古い歴史があり、日本の気候にもよく合い、全国に広まって重要野菜として東北南部以南で盛んに栽培されてきました。戦後の食糧難を支えたといわれ、当時のカボチャ生産量は今の3倍以上だったようです。園研で育成した‘松戸白’(1954年)も1963年までで配布終了していますが、2010年に宇宙飛行士山崎直子氏とともに、宇宙空間を周遊したことをきっかけに、松戸市のプロジェクトのもと、宇宙カボチャとして復活しています(写真4)。
全国各地を見ても、京野菜の鹿ケ谷カボチャや、日本料理で重宝される日向カボチャなどがいまでも各地で栽培されています。最近直売所やスーパーでよく見かけるようになったバターナッツと呼ばれるひょうたん型のカボチャも日本カボチャに分類されます。セイヨウカボチャのようにほくほく感や甘味や風味の強さはありませんが、ねっとりとした食感と上品なだしに合う特性があります。
以上ハロウィンとカボチャの関係についてと、カボチャの種類についての豆知識でしたが、皆さまもこれからの寒くなる時期、是非栄養豊富なカボチャを食べて、体調にお気をつけ頂ければ何よりに思います。
著者プロフィール
- 名前
- 長廣匠亮
- 出身地
- 山口県山口市
- 専門分野
- 蔬菜園芸学、植物育種(カボチャ)
- 趣味
- 登山、釣り、スノボ、旅
- 好きなもの
- お魚、お肉、甘いもの
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