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コラム

2022年09月02日園芸あれこれ

園芸でのマルチのあれこれ

園芸初心者を対象とした園芸講座のコラム第3弾として、園芸で用いるマルチについて、あれこれと紹介していきたいと思います。
まずマルチとは、作物に良い土壌環境をつくるためにプラスチックフィルムや稲藁などで土壌表面を覆う事で、資材そのものをさす場合もあります。
日本では、稲藁などの有機物マルチ(図1)を古くから行っていましたが、1953年以降にポリエチレンの国産化が始まってからは特に低温期の地温上昇による作期前進に多大な貢献をし、その後機能性の向上や、機械で簡易に展張できるマルチャー(図2)の開発を受けて急速にプラスチックマルチが普及、今では利用面積が世界でもトップ3に入るほどとなっております。


図1.稲わらマルチ(栽培後にすきこめる)


図2.管理機マルチャーでカボチャの定植準備をする様子


マルチの効果として、地温調節、土壌水分の保持、雑草防除、土壌の浸食防止や土壌構造の維持、土の跳ね返り抑制など多くのメリットがあり、それらが高収益に貢献するだけでなく、透水性のないマルチを用いれば、露地に比べて肥料成分の流亡が減少することで施肥量を無マルチより3割減らしても収量が低下しなかったという報告があるなど、高騰する肥料代の抑制にも効果があります。

主流はポリエチレンフィルムですが、片付けが楽な生分解性樹脂を用いるマルチ(図3)、透水性や通気性のある不織布マルチ、高温期の短期間作に向く紙マルチ、地温上昇を抑え作後に土壌改良資材としてすき込める藁などの有機物マルチ、作物の生育期間中に麦やヘアリーベッチなどを育てるリビングマルチなどあります。


図3.生分解性樹脂マルチ(土壌中で分解されて水と二酸化炭素になる)

次に、プラスチックマルチの色と特徴について説明します。
透明マルチは、地温上昇率が最も高いが雑草が生え、黒マルチ(図4)は、雑草は生えず地表面の地温を上げるが深い部分で地温が上がりづらく、その中間の特性となるのが緑マルチです。
銀や銀黒(裏が黒)マルチは、地温上昇を抑え、かつ反射でアブラムシなどの忌避効果が期待できる高温期向きで、さらに地温抑制効果に優れる白黒(裏が黒)マルチ(図5)があります。
また一般的な価格は、安い順に透明、黒<緑<銀、銀黒、白黒で、色の違いでの価格差は最大2倍程度、穴あきの方が通常の無孔フィルムより1割以上ほど高価、生分解性樹脂マルチはそれ以外と比べ2~4倍ほど高価となっています。
これらの特徴を知り、作物や作型に合わせてマルチを選ぶことは、園芸初心者が上手に作物をつくる上で大きな助けになるかと思います。


図4.黒マルチを用いたメロン栽培の様子


図5.高温期に白マルチを用いた定植準備を行う様子

最後に、実際にマルチを展張する際、マルチャーを用いるか手でうめる事となりますが、基本にして重要なことはきれいに張るということです(図6)。ピンと張ったマルチは、風でバタついてはがれるリスクを減らし、地温上昇や害虫の忌避効果など、マルチの性能を十分に生かす上で必須の技術となります。


図6.マルチの展張時はきれいに張れるよう心がけたい

その為のコツとしては、晴れた日中のマルチが伸びている時に行う事、土質によっては耕起後にトンボなどで土壌表面を均平にした方が良い場合もある事、鍬と足さばきに慣れて、裾を適宜踏み固める事が挙げられます。
また、畝をたてる際や同時マルチをする際に、まっすぐできず曲ってしまうと、ピンと張れず裾の埋まり方もばらついて風のトラブルにあったり、その後のトンネルたてや生育中や後の管理で人や機械が入る際のトラブルにつながったりすることが多々ありますので、きれいに張ることはよく気に留めて作業をして頂ければと思います。

参考文献
日本施設園芸協会,五訂 施設園芸ハンドブック,園芸情報センター,2003年

 

tugi 

長廣匠亮

著者プロフィール

名前
長廣匠亮
出身地
山口県山口市
専門分野
蔬菜園芸学、植物育種(カボチャ)
趣味
登山、釣り、スノボ、旅
好きなもの
お魚、お肉、甘いもの